女性とライオンが並ぶ、印象的なコイン。
「ウナとライオン」という名前を、目にしたことがあるかもしれません。
ウナとライオンは、英国の詩『妖精の女王』に登場する女性ウナと、彼女を守るライオンを題材にした図柄です。
コインでは、ウィリアム・ワイオンが手がけた1839年の英国5ポンド金貨で知られています。
この金貨では、若いヴィクトリア女王がウナの姿で表され、傍らのライオンには英国の人々が重ねられています。
その題材は現代にも受け継がれ、金貨だけでなく銀貨にも描かれています。
発行地や年号によって、女性とライオンの表現もさまざまです。
この記事では、ウナとライオンの物語と1839年の名作コイン、そして現代の金貨や銀貨へと受け継がれた図柄をご紹介します。

物語を現代のデザインで表現した一枚です。
ウナとライオンは、どんな物語?
題材になったのは、英国の詩人エドマンド・スペンサーによる『妖精の女王』です。
最初の部分は1590年に出版されました。
物語の中のウナは、竜に捕らわれた両親を救うため、旅に出る王女です。
その途中で出会うのが、一頭のライオン。初めはウナを襲おうとしますが、彼女の清らかさに心を動かされ、やがて彼女を守る存在になります。
女性と猛獣という組み合わせには、力強さだけでなく、信頼や守りの物語が込められています。
コインの女性は、ヴィクトリア女王
1839年の金貨を手がけたのは、英国王立造幣局の主任彫刻師だったウィリアム・ワイオンです。
ワイオンは物語をそのまま描くのではなく、ヴィクトリア女王をウナの姿に重ねました。
ライオンは、英国の人々を表しています。
女王の穏やかな姿と、力を内に秘めたライオン。
その対比が、この図柄の見どころです。
つまり、物語のウナと、現実のヴィクトリア女王。
二つの姿が、一枚のコインの中で重なっています。
女性の立ち姿やライオンとの距離、衣服の流れを眺めると、小さな円の中にも、場面の広がりを感じられます。
1839年の「ウナとライオン」は、どんなコイン?
原作として知られるのは、1839年銘の英国5ポンド金貨です。
片面には若いヴィクトリア女王の肖像、もう片面にはウナとライオンが描かれています。
どちらもワイオンの作品です。
王立造幣局博物館によると、この金貨は日常の流通用ではなく、収集用のプルーフコインとして作られたと考えられています。
主に、ヴィクトリア女王の治世が始まった頃の貨幣をまとめた見本セットに収められました。
プルーフとは、収集向けの特別な工程で作られたコインのこと。詳しくは、プルーフコインとは?でもご紹介しています。
英国王立造幣局博物館は、この金貨を「世界で最も美しいコインの一つ」と評しています。
発行枚数は、どれくらい?
英国王立造幣局博物館は、製造された数を数百枚と説明しています。
1839年銘のセットを収集家に届ける準備が整ったのは1843年でした。その後も、「ウナとライオン」のコインは折に触れて追加で製造されました。
そのため、「1839年の一年間に、同じ仕様で一定数だけ作られた」と考えると、実際の経緯とは少し違います。
枚数だけでなく、作られた背景にも歴史が残るコインです。
現代のウナとライオンとは、どう違う?
現在目にする「ウナとライオン」には、1839年の原作のほか、後世に作られたコインもあります。
英国王立造幣局は2019年、過去の名彫刻を取り上げる「グレート・エングレーバーズ」シリーズの最初の作品として、ワイオンの図柄を現代の技術でよみがえらせました。
例えば、2019年の英国2オンス銀貨は、原作への敬意を込めて作られたプルーフコインです。
また、英国以外の発行地域にも、この題材を使ったコインがあります。
コモンウェルス・ミントは、2019年にオルダニー発行の「ウナとライオン」5ポンド金貨を製造しています。
この記事では、現代版の例として、2021年セントヘレナと2019年英領ヴァージン諸島の銀貨をご紹介しています。
冒頭のセントヘレナ銀貨に続き、こちらは英領ヴァージン諸島の一枚です。

女性とライオンが並ぶ姿を描いた、現代版の一枚です。
同じ「ウナとライオン」でも、女性の姿や衣服、ライオンの表情には違いがあります。
それぞれのコインで物語がどのように表現されているかも、眺める楽しみの一つです。
ウナとライオンは、どれも高価?
1839年の金貨と現代のコインでは、同じ「ウナとライオン」でも価格に大きな違いがあります。
原作の希少性や歴史的な評価が、同じ題材を使ったすべてのコインに、そのまま当てはまるわけではありません。
金貨か銀貨か、大きさや状態、作られた数、そのコインを求める人の多さなども関わるため、「ウナとライオンなら、どれも同じように高価」とは言い切れません。
発行枚数と価値の関係は、発行枚数と希少性|コインの価値はどう決まるのか?にまとめています。
一方で、この題材に惹かれる理由は、希少性だけではないと思います。
女性とライオンが並ぶ姿が好き。衣服の細かな表現に目が留まる。物語を知って、もう一度眺めたくなる。
そんなところから、一枚との出会いが始まることもあります。
物語を知って、もう一度眺める
ウナとライオンは、文学と王室の歴史、そして彫刻の技術が重なったコインの題材です。
名前だけ知っていた女性が、物語の王女になり、若いヴィクトリア女王にもつながる。背景をたどることで、図柄の中に見えるものが増えていきます。
心に留まった図柄の背景に、物語がある。
それを知ることで、その一枚をもっと好きになることも、コインを集める魅力の一つではないでしょうか。
FALJU COINSのコレクションでは、各コインの写真や鑑定評価に加え、図柄の見どころや歴史的背景もご紹介しています。
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