小さなコインをよく見ると、皇帝の横顔が見えてきます。

没後発行貨 約1700年前の皇帝の横顔が、小さな一枚に残されています。
描かれているのは、コンスタンティヌス1世。
キリスト教の公認や、新しい都コンスタンティノープルを開いたことで知られる、古代ローマの皇帝です。
その姿は、生前だけでなく、337年に亡くなった後もコインに刻まれました。
写真の一枚も、皇帝の死後に作られた「没後発行貨」です。約1700年前の横顔が、今もこうして残っています。
この小さな一枚を眺めながら、コンスタンティヌス1世の歴史と、亡くなった後にも作られたコインの背景をたどってみます。
コンスタンティヌス1世は、どんな皇帝?
コンスタンティヌス1世は、4世紀のローマ帝国を治めた皇帝です。
「コンスタンティヌス大帝」とも呼ばれています。
複数の皇帝が権力を争う時代を経て、324年には帝国を単独で治めるようになりました。
その名と結びつく出来事の一つが、313年の「ミラノ勅令」です。
リキニウス帝とともに、キリスト教を含む信仰の自由を認める政策を進めました。
また、330年には、現在のトルコ・イスタンブールにあたる場所に、新しい都コンスタンティノープルを開きました。
政治や宗教のあり方が大きく変わっていく時代。
その中心にいた人物の姿が、コインにも残されています。
コンスタンティヌス1世のコインは、一種類ではない
コンスタンティヌス1世に関わる貨幣には、金貨や、銅を主体とする小型貨幣などがあります。
肖像の装いや裏面の図柄も、発行された時期や場所によって異なります。
同じ皇帝の名前が付いていても、すべてが同じ姿のコインというわけではありません。
さらに、生前に作られたものだけでなく、皇帝を記念して死後に発行されたものもあります。
掲載している一枚も、その「没後発行貨」です。
どのような人物なのかに加えて、いつ、どのような背景で作られたコインなのかを知ると、小さな肖像の見え方も変わってきます。
亡くなった後にも、コインに残された肖像
没後発行貨とは、その人物が亡くなった後に、名前や肖像を用いて発行されたコインです。
英語では「posthumous issue」と表記されます。
コンスタンティヌス1世は337年に亡くなりましたが、その後も彼を記念する貨幣が発行されました。
掲載個体のNGCラベルにも、「posthumous issue」と記されています。
この一枚は、皇帝の横顔とともに、亡くなった後もその姿がコインに刻まれた歴史を伝えています。
本の中で知った人物の名前が、実際に残るコインの横顔とつながる。そこに、古代コインを眺める面白さがあります。
この一枚の、どこを眺める?
小さな横顔に残る輪郭
掲載個体の肖像面には、右を向いたコンスタンティヌス1世の横顔が見られます。
額から鼻、あごへと続く輪郭。頭の後ろへ伸びる線。小さな写真ではひとまとまりに見えていた部分も、拡大すると、少しずつ形が見えてきます。
現代のコインのように、すべての線が鮮明に残っているわけではありません。それでも、人物の顔として見えてくる瞬間があります。
どんな顔立ちに見えるか。どの角度なら輪郭が見えやすいか。そんなふうに眺めることから、古代の一枚との時間が始まります。
表と裏を見比べる
肖像面を眺めたら、反対側にも目を向けてみると、一枚の印象が変わります。
掲載個体も、表と裏では残っている線や表面の表情が異なります。両面を並べて見ると、片面の写真だけでは気付かなかった違いが見えてきます。
図柄や文字をすべて読めなくても、横顔の向きや、模様の残り方、色合いから楽しむことができます。

左が皇帝の肖像面、右が裏面です。
ラベルの「AD 307–337」は、発行年?
掲載個体のNGCラベルには、「Constantine I, AD 307–337」と書かれています。
これは、ラベル上で示されたコンスタンティヌス1世の治世の年代です。
この一枚が307年から337年の間に作られた、という意味ではありません。
同じラベルに「posthumous issue」とあるため、掲載個体は337年の死後に作られたものです。
古代コインでは、人物の治世と、コイン自体の発行時期が別の情報として示されることがあります。
名前の隣の数字と、その下に添えられた言葉。短いラベルにも、一枚の背景を知る手掛かりが詰まっています。

人物名や「posthumous issue」の表記が見られます。
「AE4」「BIヌムス」は、どういう意味?
掲載個体には「AE4(BI Nummus)」という表記もあります。
「AE4」は、後期ローマの小型貨幣を、大きさによって分類するときに使われる呼び方です。
「4円」のような額面を示す数字ではありません。
「BI」はビロンを表します。銀の割合が低い合金を指す言葉です。
「ヌムス」は、このような後期ローマ貨幣の分類に使われる名称です。
商品名だけを見ると少し難しく感じますが、人物名に加えて、素材や大きさの分類、発行の背景が書かれているとわかると、読みやすくなります。
古代コインは、高価なものばかり?
長い歴史を持つことから、古代コインには高価なものばかりという印象があるかもしれません。
コンスタンティヌス1世とその一族の小型貨幣には、古代コインの収集を始める入口になるものもあります。
一方で、素材や種類、保存状態などによって、価格には幅があります。
同じ皇帝のコインでも、残っている肖像や図柄の見え方はそれぞれです。
価格や鑑定情報とともに、「この横顔が気になる」「この色合いが好き」という気持ちも、一枚を選ぶきっかけになると思います。
購入の基本を知りたい方には、アンティークコインの買い方でもご紹介しています。
小さな横顔から、古代ローマへ
コンスタンティヌス1世の名を知っていても、その姿をコインで眺める機会は少ないかもしれません。
本の中では一行で過ぎる皇帝の名前が、手元に残る横顔になる。
没後発行貨であれば、その人が亡くなった後にも、姿を残そうとした時代に触れることができます。
最初は、小ささや色合い、横顔の雰囲気に惹かれるだけでもいいと思います。
そこから人物を知り、別のコインも見たくなる。
遠く感じていた古代ローマが、一枚を通して少し身近になるのではないでしょうか。
FALJU COINSのコレクションでは、各コインの写真や鑑定評価に加え、図柄の見どころや歴史的背景もご紹介しています。
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